【詩】 蟻の最期

 

 

 

【蟻の最期】 

 

 

果実の入った容器の中に

一匹の蟻が飛び込んだ。

それを知らない容器の主人は

蓋をして、密閉してしまった。

 

 

蟻は真っ暗闇の中で

むしろ喜んで言った。

「ここには何て多くの食べ物があるのだろう!

そしてここには自分一人しかいない。

これは全て私のものだ!

ああ、まるで天国ではないか!」

 

 

蟻は大いに喜び楽しみ

毎日好きなだけ食べ

疲れたら、眠り

また食べ

休み、食べ

そうしているうちに

勤勉という言葉さえも

忘れてしまった。

 

 

 

それから幾日が経っただろう。

蟻が朝か、昼か、はたまた夜なのか

忘れてしまった頃に起き上がり

いつものように食事をしようと考えた。

 

 

しかし何も無かった。

 

 

いくら暗闇を探しても、見つからなかった。

あんなにたくさんあった食べ物は

ずっとずっと蟻が死ぬまで

存在すると思っていた食べ物は

一つ残らずなくなってしまっていた。

食べ尽くしてしまっていた。

 

 

その時、蟻は大変なことに気が付いた。

 

 

「ああ、どうしよう!

もう食べるものがない!

もう食べるものがないのに、

私はもう

ここから出られないのだ!」

 

 

蟻は大慌てで容器の壁にかじりついてみた。

するとほんの少しだけではあるが、削ることができた。

「見た目はとても堅くて削れそうもないのに、

やってみればできそうだ」

 

 

蟻は死に物狂いで壁にかじりついた。

かじって、かじって

かじって、かじって、

かじって、かじっているうちに

だんだん、だんだん力がなくなってきて

蟻はついに

倒れてしまった。

 

 

ほんの少しだけ空いた穴を見て

蟻はこう呟いた。

「このままずっと削っていけば、

いつかは外に出られるだろう。

しかし今の私には力が無い、食べるものが無い」

 

 

そして蟻は天を仰いだ。

「ああ、どうして私はここに閉じ込められた

あの時から、

すぐに出ようとしなかったのだろう。

もしそうしていたならば、

私は今頃外に出て、

私の仲間と一緒に、暮らしていただろうに。

私は勤勉さすらも、

外に置き忘れてしまったのか」

 

 

蟻がどんなに嘆いても、

もう身体は動かなかった。

 

 

蟻が静かに目を閉じて、

己の無知と惰性を嘆きながら、

静かに涙を流し、

己の最期を覚悟した時、

突然、光が差した。

蟻が目を開けてみると、

そこには光があった。

 

 

この世の地獄の蓋が、開いた。

 

 

 

2008/10/26

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